今回ご紹介するのは、胃がんで余命僅かとなった市役所の課長がそれまでの生き方を一変する人間ドラマ『生きる』です。

映画

無気力な日々を過ごす市民課長の渡辺(志村喬)は、ある日、医師から胃潰瘍と告げられるが、実際は胃がんの末期、それも余命いくばくもないことを知る。途方にくれた渡辺は偶然知り合った小説家と放蕩するが虚しいばかり。そんな折、市役所を辞めて玩具会社の工員に転職しようとしていた部下の小田切(小田切みき)と街で出会う。一緒に過ごすうちに、彼女のまっすぐな生き方に心を動かされ、市民から陳情のあった公園建設に動き出すのだった…。

<見どころ>もしあなたが「余命僅か」という宣告を受けた時、残りの人生をどう生きますか? 有り金を使って遊ぶだけ遊びますか?

この主人公も最初はそういう行動をとりますが、すぐに虚しさを感じます。一方、部下の小田切は、若く生命力に溢れ自由に生きています。

渡辺が小田切に「君はどうしてそんなに活気があるんだ?」と迫るシーンがあります。小田切は困って「働いて、食べて、ただそれだけ」と答えますが、自分が工場で作っているおもちゃを見せて「こんなおもちゃを作っているだけよ。でもこれを作っていると日本中の赤ん坊と仲良しになった気がするの」と付け加えます。

人生とは何かと哲学的に考えることも悪くはないですが、答えを探す前に、目の前のことに一所懸命取り組むだけでも十分意味のあることだと思います。

『生きる』監督:黒澤明/出演:志村喬ほか/上映時間:143分/日本公開1952年