
先日、ある政治家が「ワークライフバランスを捨てて、馬車馬のように働く」と宣言した様子をニュースで見ました。やる気を示したかったのでしょうが、少し違和感を覚えました。というのも「馬車馬のように」という言葉には、考えることを脇に置いて、とにかく動くというイメージがあるからです。がむしゃらに働くことも時には必要かもしれませんが、それよりも自分たちがどこを目指すのかを考えることのほうが、ずっと大切だと思います。
経営も同じではないでしょうか。努力を重ねるだけでは、成果は出続けません。方向がずれていれば、どんなに頑張っても徒労に終わることもあります。時には立ち止まり、考える時間を持つこと。その静かな時間こそが、次の一手を産むことがあります。いわば、創造的なワークライフバランスです。
ワークライフバランスというと、働く時間と休む時間の比率を整えるイメージがありますが、私が言いたいのはそうではありません。考える時間と動く時間を、自分の中でどう編み合わせるか。そのリズムを自分で設計するということです。たとえば、家族と過ごす時間や趣味の時間に、仕事のアイデアがひらめくことがあります。私自身、映画を観ながら事業のヒントを得ることもよくあります。逆に、仕事に打ち込むなかで、自分の生き方を見つめ直すこともあります。働くことと生きることは、本来、ひと続きの流れなのだと思います。
経営者にとっての「バランス」とは、仕事と生活の配分ではなく、成果を上げながら、自分らしく生きることをどう両立させるかではないでしょうか? そのためには、ただ動き続けるのではなく、考えるための余白を自分で確保することが大切です。考える時間を持つことで、経営の軸が定まり、言葉にも力が宿ります。
私たちが毎月お手伝いしているニュースレターづくりも、実はこの「考える時間」を持つ仕組みのひとつです。取材を通して、お客様に伝えたいことを私たちに話してくださることで、ご自身の考えが整理され、会社の価値がより明確になります。考えを言葉にする時間は、経営を整える時間でもあるのです。
「伝えること」を通じて、自分のリズムを整える。そんな時間を、ニュースレターづくりの中で一緒につくっていけたらと思います。